ワイヤードの魂であったソフトウェア。致し方ない時の移り変わりなのか,自己中心的企業の無能さなのか,今,その灯は,薄くたゆたう。
元ネットスケープ社上級副社長で米国AOL社副社長兼ネットスケープ・ビジネス・ソリューションズ責任者,ローリー・ミレク氏が辞任していることがわかった。つい先週,ネットスケープの中心的幹部だったバリー・アリコ氏が総責任者代理のポストを降りたばかり。また先月はネットスケープの創立者のひとり,マーク・アンドリーセンが,最高技術責任者の職を退くなど,AOLからネットスケープ幹部の離職,ポストの辞任が再び相次いでいる。
先週,ネットスケープ・コミュニケーターはVer.4.7をリリースした。だが,マック版ですぐわかる変更といえば…「Shop@Netscape」ボタンぐらいか。あとは,若干だが起動が速くなったことと描画速度が上がったこと(ほんっっとにわずかに),バグがいくつか解消されたこと。ひと言で云えば大きな変更はないということ。AOLは5.0へのメジャーアップグレードまで大きな変更は行わないと公言している。だがそれは,「行えない」が正しいのかもしれない。
遅々としているmozilla.orgプロジェクト(Milestone 9はかなりエレガントになってきているが…)。なによりネットスケープ・ナビゲーターを築いてきた技術者は,多くがすでにAOLを離れている。「Shop@Netscape」ボタンは所詮,AOLのショッピングモールへと導くためであり,ユーザーの意志とかけ離れた機能でしかない。AOLは,ポータルとしてのネットセンターを目的として投資したが,結局はブラウザの質の向上を怠り,ポータルのアクセスを減らすという悪い方向へと向かっている。もともとネットスケープとAOLは,社風の違いが激しくすみやかな併合は難しいと云われてきた。インターネットと云うものに対する理念の違いも,甚だしく大きい。その合間に消えていく,ネットスケープの星空…。現在のネットはその拡大の始まりにネットスケープがあった。いわば“魂”だ。その喪失はなんとかして防いで欲しいと思う,是が非でも。
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